業務用エアコンと家庭用エアコンの違いは?
業務用エアコンと家庭用のルームエアコンの違いはどこにあるのでしょうか?一番大きな違いは、業務用エアコンには大出力の冷暖房能力を持った機種が存在するということです。
家庭用のルームエアコンの冷房能力はせいぜい5 kW程度までのものが一般的ですが、業務用エアコンでは大きなものは150 kW近い冷房能力を持ったものまで存在します。このため、業務用エアコンは電源を取る方式が家庭用エアコンとは異なり動力用の三相200Vを使用します。これは一般用の単相(100 V、200 V)に比べて基本料金が高い一方、使用量料金が安くなります。大型の業務用エアコンは広い空間を長時間運転する場合に適した作りになっているのです。
ですから、大きな店舗やオフィス、食堂などで使用するなら業務用の馬力の大きなエアコンを選ぶのが適切です。もし家庭用のルームエアコンを複数台設置して同じ空調能力を得ようとしても、それぞれが大きな電力を消費してしまうので経済的ではありませんし、常に最大稼動に近い運転を続けなければならないのでエアコンの寿命を縮めてしまうことになります。
また、業務用エアコンには複数の室内機を同時に使うオフィスビルなどに向けた「ビル用マルチエアコン」というタイプのエアコンがあります。家庭用のルームエアコンは一つの室外機に対して一つの室内機が対応しています。それに対し、ビル用マルチエアコンでは室外機が一つでも複数の室内機を設置することができ、メンテナンスの利便性や見た目に優れています。家庭用エアコンは、部屋ごとにエアコンを設置しようと思ったらその分だけ室外機を設置しなければならないので、業務用エアコンの大きな特徴の一つだと言えるでしょう。
一方、小さな部屋で使用するなら商店や食堂であっても家庭用エアコンで十分だという気がするかもしれません。実は、P56形(2.3馬力)までのエアコンであれば、業務用エアコンと家庭用エアコンの間に構造や耐久性の大きな違いはありません。2.3馬力相当のエアコンは商店であれば9坪、食堂であれば6坪程度の広さで使われるのが標準的なので、これよりも規模が小さい空間であれば業務用と家庭用どちらを選んでもあまり違いはないということになります。電源も、4馬力程度までであれば業務用エアコンでも単相・三相が選べる場合が多いようです。
しかし業務用でエアコンを選定する際には注意しなければいけないことがあります。家庭用のルームエアコンの性能は部屋の広さ(畳数)で決めるのが一般的ですが、業務用のエアコンの冷房能力は部屋の大きさだけで決めることができないのです。
業務用エアコンの冷房能力を決めるのはエアコンにかかる「熱負荷」です。例えば一般家庭であれば室内の人の出入りはほとんどなく、家電や調理などの排熱もそれほど大きくありません。しかし、例えば厨房が併設された食堂の場合、室内には大勢の人がいて出入りが激しく、さらに厨房からの排熱は相当なものです。たとえ部屋の広さが同じでも、一般家庭と食堂では同じ温度を保つため必要な能力がまったく異なってきます。
ですから、業務用のエアコンは設置する場所の広さだけではなく、運転時間やエアコンにかかる熱負荷まで考えて選定することが大切です。長時間運転をする必要があったり、熱負荷が強い場所で使用したりするのであれば、小さな部屋であったとしても、やはり業務用エアコンを選ぶのが一番良いという場合が多いのではないでしょうか。家庭用エアコンの方が導入コストの面で有利であったとしても、強い負荷をかけ続けて運転することでランニングコストや寿命の面で不利になることが想定されるからです。
エアコンは安い買い物ではありません。設置してから後悔しないために、どのような製品を選べば良いのか、よく検討するようにしてください。自分の仕事場にはどのような製品が適しているのか分からないという場合は、一度メーカーや取扱業者に相談してみると良いでしょう。