エアコン豆知識

業務用エアコンのAPF表示について

2021.09.30

業務で使用する設備や機器の省エネルギー化を目指すとき、業務用エアコンは真っ先に改善が検討されるものではないでしょうか。省エネ性能の高い業務用エアコンを選択することは、地球環境の保全だけではなく経費削減にもつながります。省エネ性能はJIS規格で統一指標が決められています。この指標がAPFと呼ばれるものです。

 

APFという指標ができる以前から、エアコンの省エネ性能を表す目安としてCOP(Coefficient of Performance)』というものが使われてきました。これは冷暖房能力を消費電力で割った値で、1 kWhあたりどれだけの仕事をすることができるのかを表したものです。例えば、COPが5の暖房であれば、1 kWhの電力を消費することでそのエネルギーの5倍もの熱を室内にもたらすことができるということを表します。エアコンにおいてCOPが5というのは特別高性能なわけではないので、エアコンがとても効率の良い機械であることがわかります。

 

これに対し、2006年に登場したAPF(Annual Performance Factor)』も同じように1 kWhあたりの仕事を表していますが、通年の総合値として算出することで実際の使用状況により近い環境での運転効率を算出しています。APFは夏季の冷房と冬季の暖房の省エネ性能をトータルで表すことができ、数値が高ければ高いほど省エネ性能が良いということになります。2015年には評価基準が見直され、さらに実態に合った指標に進化しました。現在はCOPとAPFが両方表示され、業務用エアコンの省エネ性能を知るための重要な指標として使われています。

 

COPやAPFというと少し親しみにくい印象を受けてしまうかもしれませんが、実は姿を変えて私たちの暮らしの中に既に溶け込んでいます。例えば、家庭用エアコンのパッケージに表示されている『統一省エネルギーラベル』。エアコンや冷蔵庫など家電の省エネ性能を星の数で表したもので、見覚えがあるという人も多いかもしれません。この統一省エネルギーラベルのエアコンの評価基準としてAPFの数値が利用されています。

 

環境省では、エアコンなどの環境負荷が大きな機器を購入する際には、環境への影響ができるだけ少ないものを選んで購入することを目標にする『グリーン購入』という考え方を推奨しています。エアコンは出荷台数が非常に多い機器であり、近年のヒートアイランド現象などの一因になっているとも考えられているので、進んで省エネ性能の高い業務用エアコンを選択することは非常に意味のあることです。

 

グリーン購入を実際に行うときに大いに参考になるのがパッケージに表示されている各種のラベルやAPFの数値です。環境省のグリーン購入手引書を見てみると、エアコンを購入する際に参考となる環境ラベルには、先ほど登場した『統一省エネラベル』『APF』が挙げられています。統一省エネラベルは家庭用のルームエアコンが対象ですから、業務用エアコンの環境指標としてはAPFがもっとも重要であるということになります。

 

では、具体的にはどんな数値が基準になっているのでしょうか?グリーン購入の基準は『トップランナー基準値』といい、より厳しい環境基準を達成するために制度を制定した当時のもっとも省エネ性能が高い製品(トップランナー)を目標基準として設定したものです。業務用エアコンは2015年4月以降、より省エネ性能の高いトップランナー基準が適用されていて、型式ごとの目標値は以下のようになっています。

 

業務用エアコンのグリーン購入判断基準(2016

4方向カセット形    それ以外

40型     5.2         4.4

45型     5.2         4.4

50型     5.2         4.4

56型     5.1         4.3

63型     5.1         4.3

80型     5.0         4.2

112型    5.2         4.4

140型    5.0         4.2

160型    4.8         4.1

224型    4.4         3.7

280型    4.2         3.5

 

各エアコンメーカーのカタログを参照するとわかりますが、現在の省エネ志向型の業務用エアコンではAPFの値が7を超える高性能な製品も登場しています。省エネ表示が義務付けられていることもあり、各メーカーとも日々技術を磨いてさらに効率の良い業務用エアコンの実現を目指しています。

 

省エネ性能が高いということは、地球環境に優しいというだけではなく電力効率も良いということです。設備としての業務用エアコンの寿命は10年以上あることを考えたら、省エネ性能を重視することのメリットは少なくありません。APFはJIS規格ですので、各メーカー共通の基準です。APFの値を上手に活用して、よりよいエアコンを選択しましょう。

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