業務用エアコンの能力
業務用エアコンは家庭用のルームエアコンに比べて当然能力が高く作られている場合が多いのですが、一体どの程度の能力を備えているのでしょうか?エアコンの能力はkW(キロワット)という単位で表すことができるので、まずはその数値を比べてみましょう。
室外機ベースで見てみると、家庭用ルームエアコンの一般的な能力はおよそ5.0 kWまでのものが一般的です。それに対して業務用のパッケージエアコンでは、ルームエアコンと同じ能力のものもありますが、大きなものでは150 kWに達するものまであります。大型の業務用エアコンはとても強力な冷暖房能力を持っているのです。
では、業務用エアコンを新設したり買い替えたりする際には、どの程度の能力を持ったエアコンを選べば良いのでしょうか?初期投資や消費電力にかかる費用を考慮すると、なるべく能力が低い業務用エアコンで間に合わせたい、あるいは家庭用エアコンを転用し複数台運転させたいと考える方もいるかもしれません。
しかし、空間に対して能力が低いエアコンは冷暖房が効きにくいばかりか、エアコンの駆動系の稼働率が常に高くなり寿命を縮めてしまうリスクがあります。ですから、お薦めすることはできません。また、家庭用エアコンを複数台使うことも、導入のハードルこそ低いかもしれませんが、消費電力の効率が悪くランニングコストの増大につながってしまいます。
一方、空間に対して能力が高すぎる業務用エアコンを設置すると、定格運転をかなり下回る弱運転をしすぎることとなり、燃費が良くありません。エアコンは家庭用でも業務用でも、定格能力より少し余裕があるくらいで運転するのがもっとも効率が良いと言われているのです。
このように、業務用エアコンは空間に対して能力が低すぎても高すぎても適切ではなく、エアコンの寿命を延ばすためも必要な能力を見極めることが非常に重要です。ただ、ここで気をつけなければいけないのが、業務用エアコンのカタログに書かれている部屋の広さだけで能力を決めてしまってはいけないということです。家庭用のルームエアコンは部屋の広さで能力を決めることが一般的ですが、業務用エアコンの場合は広さに加えて用途も十分に検討して機種を選ぶ必要があります。
例えば、一般的なオフィスと厨房が併設された食堂について考えてみましょう。部屋の広さが同じであれば、同じ能力のエアコンを導入できるでしょうか?食堂では厨房から大量の熱が発生するため、より能力の高いエアコンを選定する必要があるはずです。同じ広さの空間でも、オフィスと食堂では求められる能力が違うのです。
エアコン選定の際に考慮する必要がある周囲の熱量のことを『熱負荷』といいます。熱負荷は部屋によってまったく異なり、例えばオフィスでは熱の発生源はOA機器や室内に居る人間くらいです。ところが、食堂では厨房、美容院ではパーマ機などが大量の熱を発生させるため能力的に余裕をもった機種を選定する必要があります。また、オープンスペースになっている商店や日差しが強い部屋でも部屋の広さに比べて余裕を持ったエアコンが適しています。
熱負荷を考慮した業種ごとの部屋の面積とエアコンの能力の対応は以下の表のようになっています。業務用エアコンでは能力を表す際、kW(キロワット)の他に馬力でも表現することがあるので両方を併記しています。
形式 相当馬力 冷房最大能力 一般事務 食堂
P40 1.5馬力 4.0kW 17~38 m2 11~21 m2
P45 1.8馬力 4.5kW 20~43 m2 12~24 m2
P50 2馬力 5.0kW 22~48 m2 14~26 m2
P56 2.3馬力 5.6kW 24~53 m2 15~29 m2
P63 2.5馬力 6.3kW 27~60 m2 17~33 m2
P80 3馬力 8.0kW 35~76 m2 22~42 m2
P112 4馬力 11.2kW 49~107 m2 30~59 m2
P140 5馬力 14.0kW 61~133 m2 38~74 m2
P160 6馬力 16.0kW 70~152 m2 43~84 m2
P224 8馬力 22.4kW 97~213 m2 38~75 m2
P280 10馬力 28.0kW 122~267 m2 43~85 m2
上の表を見ると、食堂として使われる部屋では同じ広さの部屋であっても一般事務に使われる部屋より高い冷房最大能力が必要であることがわかります。このような定格能力は、JIS標準条件でエアコンの能力を表示するように定められており、各メーカー共通です。空調は一度設置すると長く使い続けることになります。能力を選ぶ際は、部屋の広さだけでなく環境の熱負荷をしっかりと考えましょう。